第8回まんまる会 「夢叶えますキャンペーン」報告書

日本の防災教育から学ぶ

横須賀市の防災訓練と横浜市民防災センターを訪問して



2012年2月

横浜国立大学修士課程

イーシ・ロテイ(ブータン)




私の夢


 日本の「防災教育」の政策や条例について学び、防災対策についての詳細を知ること3 月11 日の大震災の際、釜石市で多くの児童、生徒の命が救われたことを知ってから、日本に滞在している間に「防災対策」について学びたいと思うようになりました。釜石市の子どもたちは、よい教育や防災訓練によって意識や知識を備えていたのだと思います。もしこのような防災教育が世界に広まれば、自然災害が起こった時に多くの人の命を救うことができると思います。

ブータンでも、多くの自然災害を経験しておりますが、日本のような防災教育政策はありません。よって、ブータンにも「防災教育」が必要だと感じており、日本の事例を学んだ後、ブータンでの同政策を起草したいと考えています。


夢を叶えた人

イーシ・ロテイ(Yeshey Lotay)さん ブータン王国内務文化省防災局

2005年にブータン王立大学理工学部土木工学科を卒業し、防災局に勤務。インフラ設計、災害復興を専門とする。2011年より横浜国立大学大学院に留学中。東日本大震災の被災地やフィリピンの台風被災地などを訪れ、学んでいる。




報告書
○横須賀市の震災時避難所での宿泊体験会
このプログラムは1 月14 日から15 日にかけて行われました。まずはセミナーが行われ、災害時の情報伝達に使用する「やさしい日本語」についての話がありました。外国人にとっては特に漢字が難しいので、漢字の表現はやさしくする必要があります。日本語はひとつのことばで違う意味になったりするので混乱が生じることもあります。

災害時に各国の人々に対応するには、多言語による支援が必要です。私達はグループに分かれ、情報用の張り紙の作成と、伝えるための表現を考え、やさしい日本語の演習をしました。

セミナーの後、平作小学校の体育館に移動し、避難所生活を体験しました。まずは寝場所を確保し、その後カレーと豚汁を食べました。夕食後、じゃんけんゲーム、メッセージをジェスチャーで伝えるゲームをしました。その後、外国人サポートのための模擬訓練が行われ、避難所に居る人々への巡回の練習をしました。

巡回の時、避難場所にいる外国人(訳者注:米軍ベースから衛生兵が参加し、様々な役を演じました)からは以下のような質問がありました。

1. 避難所にトイレはありますか?

2. 子どもが通っている学校は無事でしょうか。授業はいつ再開されるのでしょうか?

3. 家が壊れました。新しい家を手に入れることができると聞きましたが、本当ですか?

4. 子どものためにおもちゃが欲しいのですが、どこで手に入れられますか?

5. 健康保険証をなくしました。どうしたらよいですか?

6. 私の日本人の夫/妻が亡くなりました。日本を出て行かなければなりませんか?

7. 家が全壊しました。どうしたらよいですか?

8. 家族や友達のことを心配をしていますが、電話がつながりません。この人たちの安否を確認するにはどうしたらよいですか?

9. ここの食事に豚肉/牛肉は入っていますか?

他の人を助けたり支援したりする前にまず自分自身で経験しましょう!寒い体育館での1泊体験で私は多くのことを学びました。

まずは、 避難場所ではどんな物が手に入るか?

避難場所の運営方法

避難所にいる人達に情報伝達する方法

被災者と支援者の間のコーディネート方法

さらに、 避難所での多言語の必要性

避難所で提供される設備について

このように、1泊避難訓練は大変有意義でした。寒い体育館で1泊したことで、少な

くとも実際にどのようなことが起こるかを感じることができました。私はブータンの災

害対策局で働いていますが、私達は災害がいつ起こるか知ることができません。このよ

うな意識を高める活動は非常に有益であり、市民が実情を体験するのに役立ちました。

○横浜市民防災センター訪問

2012 年2 月 18 日に、私は横浜市民防災センターを、まんまる会会員3 人と訪問

しました。訪問では多くの情報と知識が得られました。災害劇場では12 分のビデオで

様々な自然災害と人為災害を見ました。それにより災害の原因、自然災害に対する備えの方法を理解することができました。又、関東大震災

の模擬体験で、家の揺れを経験しました。これは私に

とって初めての模擬地震体験であり、実際の揺れを感

じることができました。この地震模擬体験は私の地震

に対する意識を高め、揺れの間、棚などにある物の落

下が大変な衝撃となることを学びました。そこで、私

は地震の揺れに備えて、物が落下したり入口をふさいだりしないよう、固定しなければ

ならないと感じました。

暗闇体験もしました。学ぶことの多い体験でした。地震の時は停電することが多いの

ですが、停電がより大きな災害をもたらします。よって、暗い部屋の中で「出口」をど

うやって探すか、どうやって建物から出るかを学ぶことが非常に重要です。

建物の中にいる時の火災の場合、部屋に煙が充満していることが脱出を困難にします。

よって、「出口」を見つけることが重要になります。防災センターでの模擬煙体験は煙

で一杯の部屋からどうやって出るかを教えてくれました。

センターは、防災教育に役立つ様々なタイプの自然災害についての設備を備えていま

す。これは市民が防災手段について多くを知る助けになります。横浜市民防災センター

を訪れた後、私は、自然および人為災害についての意識を喚起するために、ブータンで

も人々に自然災害について知らせる施設が少なくともひとつは必要であると感じました。

防災センターで災害について多くを見た後、

防災についての知識が増えました。参加した

二つの催しで得た知識と経験を、私達の仕事

仲間とブータンの人達と共有します。

まんまる会の会員の皆さまに、すべての活

動で私を支援してくださったことを感謝しま

す。そして日本でたくさんの催しを経験した

ことは、私に大変役立ちました。

(原文英語 翻訳:まんまる会)


参考 イーシさんが参加した催し

災害時外国人サポーター養成講座・寒冷期避難所体験

共催 横須賀災害ボランティアネットワーク・NPO 法人横須賀国際交流協会






日本の防災教育から学ぶ

横須賀市の防災訓練と横浜市民防災センターを訪問して

発行日:2012年8月20日

著者:イーシ・ロテイ

編集/発行:まんまる会

連絡先:〒240-0053横浜市保土ヶ谷区新井町274-9

onokyo@nifty.com 小野 京子

まんまるURL: http://www.geocities.jp/manmarumanmarukai/