第四回「夢叶えますキャンペーン」 ご報告
鈴木明子

 今回(第4回)の「夢叶えますキャンペーン」は、中国河北省出身の留学生 杜 勝蘇 さんによる書道芸術展となりました。杜さんは2002年来日以来5年、亜細亜大、東京学芸大、横浜国大に学び、今年(2008年)3月帰国の予定です。
 杜さんは中国で既に青年書道家として将来を嘱望されており、帰国を前に是非日本で展覧会を開きたいと、以前から熱望されていました。しかしその実現のめどが立たないまま、昨年の夏休みに帰国した折に「とにかく作品を書こう」と思い、一気に52点の作品を仕上げました。昨夏は折からの猛暑で、したたる汗を拭いながら、600枚ほど書いたそうです。表装も終え仕上がった作品を携えて再来日、ひたすら機会を待っていた折も折、横浜国立大学中国学友会主催の中秋節のパーティでまんまる会のキャンペーンを知り、その日のうちに応募されました。何と言うめぐり合わせでしょうか。中国にも「渡りに舟」ということわざがあるかないか知りませんが、まんまる会でもこのめぐり合わせを大切にして、全員一致で当選を決めました。

 昨年(2007年)12月2日〜3日の二日間に亘って「かながわ県民センター」一階大会場で、48点の作品が展示されました。

 第一番に掲げられたのは“故人 西のかた黄鶴楼を辞し”ではじまる李白の七言絶句でした。その他、杜牧 司馬光 王之渙 等日本人に馴染みの深い詩句が並び、来場された方々、特にお年を召した方々には大好評でした。会場には杜さんご自身をはじめ、まんまる会の会員が常時つめて来訪者のお相手をしました。ご覧になった皆さん方は、異口同音に「分かり易い」「親しみ易い」とおしゃっておられました。その言葉の裏には、日本の現代書道展に対するいささかの不満もかいまみえる様で、考えさせられるものがありました。また同時に多くの皆さんが、留学生支援に関心を持ち「まんまる会の活動」に好意を持っておられるのを感じ、有難く嬉しく思いました。

 私が小さなデジカメで作品を撮っているのを見ておられた来訪者のお一人が、ご自分のカメラで改めて撮って下さり、それをわざわざ郵送して下さいました。それはまさに作品と言える様な立派なもので、私は恐縮しながらも有難く頂戴致しました。

 多くの善意の方々に支えられて我々の活動があるのだと、改めてしみじみ感じさせられました。


『杜勝蘇書道芸術展』報告書
 2007年12月初旬、『杜勝蘇書道芸術展』を横浜市かながわ県民センターで開催できたのは、まんまる会の皆様の親切で熱心な応援をいただいたおかげです。今回の展示会は本当に大成功裏に終わりました。ご協力に心からお礼を申し上げます。

 今回の展示会を見に来てくださった300人ほどの日本社会各界の皆様及び日中友好人士たちにこの展示会は大好評をいただきました。これは私にとって最高の励ましです。将来に向って、今後も最高の書道芸術を目指していきたいと意を強くしました。

 今回の書道展の広報のため、中国国内の『人民日報』「海外版」、『神州学人』、『書法導報』、『石家荘日報』、『燕趙晩報』及び日本国内の『中文導報』、『日本新華報』などの各新聞社に連絡したところ、以上の各紙に掲載され、また他にも取材を受けました。

 今回、展示した作品はすべて私が2007年の夏休みに中国に帰って創作した作品です。作品の内容は中国古典の有名な詩句です。例えば、李白、杜甫、王維などの古詩です。蒸し暑いなか、私は書を書きながら、片手で汗を拭きます。ほとんど部屋から外出することなく、ひたすら一生懸命に繰り返し考えて、創作します。しかし、いい作品を書き上げるのは本当に難しいですよ! 容易には出来ません。その時、自分の心は緊張し落ち着かない、とても苦しいです。でも、私は自信を失わず、何回でも、またもっと何十回でも、一つの作品を繰り返して書きます。このような状況で気が付かない間に2カ月近く経ちました。

 このような苦しみの中、50点の作品がやっと出来ました。その後、表装して改めてもう一度見た時、私は自分自身さえびっくりするような本当に素晴らしい作品が出来たと思いました。私は自分に打ち勝ったと、幸せに感じ、本当に嬉しく思いました。今回の書を創作することを通して、今後は如何なるの困難にあっても、自分で努力すればどのようなことでも超えることが出来る、と深刻に感じています。

 今一度、私は心から『まんまる会』の方たちと、いつも応援してくれる方たちにお礼を申し上げます。本当に皆さんに感謝いたします。

                            2月吉日    杜 勝蘇

杜勝蘇略歴

1976年 中国河北省保定に生まれる 当代中国書法界に於ける最も実力を持った青年優秀書道家の一人

1998年 中国南京芸術学院を卒業し、著名学者の徐利明先生に師事

2002年 来日 亜細亜大学留学生別科にて勉学

2003年 東京学芸大学に入学し、日本著名学者の加藤祐司先生に師事

2004年 東京学芸大学「中国留学生学生学友会」会長に就任

2005年 横浜国立大学に入学し、日本青年学者の青山浩之先生に師事

2006年 横浜国立大学大学院に進学し、国語教育を勉強する

2007年 「全日本華人書法家協会」理事に就任


仲間がたくさん駆けつけてくれました


指導教官青山先生と作品について語る杜さん


杜さんの作品は、掛け軸、扇面、友人の絵に書を添えたもの、と様々で、私たちを楽しませてくれました。また、会場に来てくださった方とお話できたのも、まんまる会の会員にとってはうれしいことでした。書かれた句について話している時に、杜さんの友人の侯さんが興味深い話をしてくれました。そこで、侯さんにお願いしてその内容を文章にしていただきました。以下にご紹介します。

対聯(ドウイレン)のはなし
侯 偉青 

  去年の年末、かながわ県民センターで杜 勝蘇さんの書道芸術個展が行われた。杜さんは現代中国書道界において、最も実力を持った青年書道家の一人と言われている。

当日に展示された作品の中、右側の写真に写っている対となっている句の書が注目されていた。右側の掛け軸に「豪端龍矯健」と書かれ、左側に「指間花飛揚」と書かれた。右から左へ句を読んでいくと、筆の先の動きは俊敏で力強い龍の如く、指の間の動きは空で優雅に舞う花の如くという意味になる。書道家の杜さんにとって、このように龍のような力強さを持ち、また空に舞う花のような優雅さをもつ書を理想としているであろう。このような左右対称で一対となる句は中国語で「対聯」(ドウイレン)と呼ばれている。


 通常、「対聯」(ドウイレン)とは、対になっている縁起のいい言葉のこと。また、その言葉を2枚の紙に書き分けて、玄関や壁などに左右に分けて貼ったもののことである。それは記録に残されたものだけでも、2000年あまりの歴史を数えるという。

 「対聯」は中国の人々に日常生活の中で親しまれたものである。「対聯」にはおめでたい言葉が書かれ、その家の人びとの思いや願い、そのときの家族の状態があらわされる。道行く人びとは「対聯」を見ることによって、その家で結婚した人がいたとか、昔ならば、科挙の試験に誰かが合格したとか、いうことを知ることができた。

「対聯」のなかで特に春節(旧正月)に貼り出されるものを「春聯」とよぶ。一定の規則に従う句を三枚の赤い紙に書き、建物の入り口または部屋の中のメインな飾り場の両側と上に貼るものだ。右側に貼るのは「上聯」、左側に貼るのは「下聯」、上に張るのは「横批」と言う。「上聯」と「下聯」は言葉の意味が対照的になる対句であり、「横批」は対句の意味をまとめたり、他の意味に転じたりする短い一句だ。例としては、以下のようなものだ。

横批:萬事如意(全てのことがうまくいきますように)

上聯:一順百順千般順(一つが順調に、百が順調に、千の事が順調に)

下聯:人和家和萬事和(人が和やかに、家が和やかに、全てのことが和やかに)

「春聯」は人々の願いを表しているとともに、魔よけの効果があると信じられている。最近では中国の都市のスーパーやデパート、村の市場で印刷された「春聯」や「対聯」が売られている。春節が近くなると赤地に金字で印刷された「春聯」が店先にぶら下げられる光景も珍しくなくなってきた。とはいうものの、まだまだ「春聯」を自分の手で書く人は多い。多くの場合、一家の主が春節を前にして、次の年への希望をこめて墨筆で成句や自ら考えた文言を紅色の紙にしたためていくのである。

春節(旧正月)用の「対聯」は「春聯」と呼ばれて有名だが、それ以外にも、祭日用の「節日聯」、業務用の「行業聯」、住宅用の「居室聯」、婚姻や慶事の「喜慶聯」、ほかに「風景聯」「名勝聯」、海外で使われた「海外聯」などのものもある。「対聯」が、ただ言葉を並べればいいのではなく、そこには一定の規則があり、それを守らなければ意味をなさないのだ。

たとえば、

(1)対句の文字が同数でなければならない、

(2)文法や語意をそろえなければいけない、

(3)声調を整えなければいけない、    など。

  それだけに、大変な知識と経験がなければ、オリジナルの「対聯」は生み出せないであろう。「対聯」を知ることによって、中国文化を知る手立てにもなる。悠久の歴史のなかで編み出された“言葉の真髄「対聯」を、じっくり味わってみるのも一興であろう。


第四回「夢叶えますキャンペーン」 ご報告


「まんまるゆめ夢ちゃかん茶館とミニバザー」へのおさそ誘い

●留学生たちの「春節パーティー」●


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御意見をお寄せ下さい。 丸谷士都子@まんまる会