第8回夢叶えますキャンペーン

日本の防災教育から学ぶ

丸谷士都子

 夢叶えますキャンペーンへの応募者を募るのは毎年苦労します。私たちは、留学生のイベントに出かけたり、留学生会館に出向いたりして説明し、輪を広げようとしています。でも、ひょんなきっかけから応募者を見つけることもあります。

 今回「夢を叶えた」学生は、ブータンからの大学院生イーシ・ローテイさん。紹介してくださったのは、私が主宰している英語で話す会Tea & Talkのメンバーの井守加寿子さんです。Tea & Talkの友人たちはいつもまんまる会を応援してくれ、バザーの品やカンパをいただいています。締め切り日を過ぎ、今年度の応募者はゼロ、と思っていたら、井守さんがホストファミリーをしている留学生が応募したはずだというのです。再送してもらいました。

○日本の防災について学ぶ「夢」

 イーシさんの応募内容が震災関連のものだったので、まんまる会はとても興味を持ちました。2011年3月11日の東日本大震災後の4月に来日したイーシさんの日本での夢はただひとつ。「防災教育」について学ぶことでした。留学先の横浜国立大学では、インフラ設計や災害復興を専門に学んでいることもあり、釜石市も訪問していました。訪れた鵜住居(うのすまい)小学校と釜石東中学校両校は、在校していた約600人全員が無事に避難したことを知ったそうです。釜石市で実施されていた「防災教育」にとても大きな興味を持ったということです。

 しかし、具体的な計画は、90ページに及ぶ「釜石市津波防災教育のための手引き」を英語に翻訳して、ブータンの防災教育の創設に役立てたいというものでした。意図としてはすばらしいものの、手引きを翻訳するだけではもったいないと思い、何度もメールのやりとりをし、まんまる会がどのように夢の実現をお手伝いできるかを話し合いました。

 手引き全体の英訳は見つからなかったのですが、釜石市の防災教育作成に関わった群馬大学の片田敏孝教授の書いた英文の論文をいくつか見つけ、イーシさんに送りました。さらに、片田教授と連絡を取り、できれば会って話を聞く計画を立てました。


 イーシ・ローテイさん

○災害の疑似体験

 そのようなやりとりをしている時、私の友人から、「1月に過酷な体験をします」というメールが届きました。詳しく聞いてみると、横須賀市の体育館で一夜を過ごす防災体験・訓練があるというのです。早速イーシさんにメールを打つと、ぜひ参加したいという返事が来ました。友人を通して予約し、体験型の訓練に参加しました。

 防災センターを見学したい希望もありましたので、まんまる会のメンバー3名と一緒に横浜駅西口近くにある横浜市民防災センターに行きました。

 結局は群馬大学の片田教授は震災関係で一躍話題となりお忙しかったのでしょうか、返事をもらうことができませんでした。そして手引きの翻訳をしてくれる人も見つからなかったのですが、概要は論文でわかったということで、以下のふたつをまんまる会の活動内容としました。

1.横須賀市の防災訓練

2.横浜市民防災センター訪問

(*別紙報告書参照)

 「日本の防災教育について学ぶ機会を持つことができれば素晴らしく、そうすることは、世界中で人命救助に関わる重要な役割を果たすことでしょう。日本での私の夢は、災害時に子どもや他の人々を救うために日本の防災教育について学ぶことです」という最初の目的は果たせたのではないかと思います。

学びが多かった報告会


 4月29日にかながわ県民センターで第8回夢叶えますキャンペーンの報告会が開かれました。まんまる会6名と私の英語の生徒さんなど3名が参加しました。英語でのプレゼンというので声をかけたものです。通訳は丸谷が担当しました。

○第1部 体験の報告 

 横須賀市の防災訓練では、外国人に対してのやさしい日本語を使った配慮や人を助けるために先ずは自分が体験することの大切さを学びました。防災センターでは、自然災害や火事などの人災について分析しているビデオを見たり、地震が起きた時の揺れの体験や火事の煙の体験をしました。このようなトレーニングや体験ができる施設はブータンにはないので、帰国したら提案をしたいと、マニュアルの素案を見せてくれました。

○第2部 ブータン王国について

 第2部では、ブータン王国と自然災害の概要について話してくださいました。面積は

38,394 km2,人口約708,000人のブータン王国は標高が150mから7553mの差があります。

第4代国王が、1972の即位後にGNH(国民総幸福度)を定め、国家を導く哲学となっています。その4つの柱は、

1.持続可能な社会経済開発

2.環境保護 -

3.伝統文化の振興 -

4.優れた統治力

 多様な国土を持つブータンには、自然災害も多くあります。地震、暴風、氷河湖の決壊、鉄砲水、土砂崩れなど。災害に対する復興にかかる費用が大きな負担になっているということでした。防災への備えが必要とされることがよくわかりました。



子どもたちへの防災指導案



地震が来たら?
1.安全な場所に 2.外に出ない 3.揺れが止まったら外へ出る 4.室内にいたら頭を守る 5.落下物から離れる 6.近くに隠れる所がない場合は、腕で頭を守る 7.出口を確かめる 8.ドアを開けておく 落ち着いて 9.外へ出る時は、かばんを頭に乗せてゆっくり歩く 10.決められた避難場所に集まる


報告会の様子