MICかながわ

神奈川に暮らす外国籍の人たちの医療通訳制度
後岡和代


今インドにいます。暑さとあふれる人々。それでも時折吹きすぎる風が何とも心地よい。でも、もしここで病気になったらどうするだろう…言葉の通じない地で病院に行くのはためらわれます。日本語で診てくれる病院があったらいいだろうな…。そんなことを考えていたら、日本に暮らす外国の人たちの気持ちがぐっと身近に感じられて来ました。

*神奈川県との協働で
 私の所属する医療通訳派遣の「特定非営利活動法人多言語社会リソースかながわ(以後「MICかながわ」)」は,そのような、日本語を母語にしない方達の役に立つよう、日々悩みながら活動しています。 2002年のFIFAワールドカップの通訳として集まったボランティアを中心とするMICかながわと、外国籍県民会議の提案を受けた神奈川県国際課との協働で始まったという通訳派遣システム。試行を重ね、指定病院のソーシャルワーカーを通して外国の方の診療にボランティア通訳を派遣するシステムを作り上げてきました。

*神奈川に暮らす外国籍の人たちのために
 今話題の医療ツーリズム(最先端の医療を求めて治療のために渡航すること)やオリンピック等の旅行者のためというよりは、神奈川県で暮らす方のための地道なシステムです。言語も当初の数カ国語が十カ国まで増え、今も徐々に追加されています。一年の派遣件数は四千件を超えました。

*課題
 需要の高まりは喜びでもありますが、現実は通訳やコーディネーターや事務局への負担となって迫っています。件数の増加がなかなか収入に結びつかないのが大きな問題です。それでも、MIC自体もこの活動の費用の一部を負担し、苦しい経済状態ながら、しっかりと意見を言える立場を確立しています。診療には言葉以外にも、文化や国の体制、社会制度、来日の理由などにより、思いも寄らない問題が発生し、それは実際にその場にいる者にしか目にできず、改正の提案ができないことが多いからです。

*辛いこともうれしいことも
 MICかながわのよいところは、誰もが常に前向きに、楽しげに、風通しの良い活動を続けていることです。それはMICの活動理念「ことばで支えるいのちとくらし」に皆が誇りを持っているからではないでしょうか。 通訳やスタッフは定期的に研修を行い、状況を理解し、自分の力を向上させています。通訳の現場では、辛い告知をしなくてはならない時もありますが、誕生や回復の喜び、患者の真摯な態度に励まされることが多いのです。これらこそMICの活動で得られるなによりの収穫です。 もし、興味を持たれたらMICかながわのホームページをご覧ください。こちら三カ国語で構成されています。そして出来れば会員になっていただけると、こんな嬉しいことはありません。今このような医療通訳ボランティアシステムは日本の各地で行われています。その発祥の地は神奈川です。まだまだ発展の余地のあるこのシステムを大勢の方に支えていただけたらと思います。 







第12回 ゆめ夢かな叶えますキ