第十二回夢叶えますキャンペーンの報告                                                                    
 昨年の11月、締め切り間近にカザフスタンからの留学生・ヌルトレウ・ジャナルさんから応募がありました。

「今回私の叶えたい夢は子供たち向けの本を作ることです…カザフスタンの子供たちに日本という国を紹介出来たらうれしいです」

絵本を作る!カザフスタンの学生からの応募!

どちらも初めてのことですが、意義のある内容に私たち会員の夢も膨らみました。まず一回目の面接をしました。

 ジャナルさんは東海大学で工業化学を学ぶ大学院生、笑顔が爽やかで、どこかアジア的な顔立ちに親しみを感じました。日本に来て美しい絵本に心惹かれた、ロシアの占領下にあったカザフスタンでは今はまだカザフ語の良い本がないが、子供たちに母語で本を読む習慣を育んでもらいたい、と夢を語ると共に、絵本作りを学ぶ意欲にもあふれ、ネット上の出版社も調べて来ていました。すぐに支援を決定しました。

デザインを学ぶタイからの留学生・通称ノックタンをイラストレーターとして仲間に引き入れ、1月にはページごとの文章とイラストを付けたドラフトが出来上がりました。季節感の違いなど、まんまる会からもいくつかアドバイスしました。

 印刷の準備が整う頃には、120冊印刷して船便で国へ送り、図書館、学校、チルドレンズホームで配布し、日本紹介のワークショップを開く、と夢も成長していました。報告のメールからは、夢に近づいて行く喜びが伝わってきます。出来上がった絵本は望みどおり色鮮やかで、ジャナルさんが見た日本が詰まっていました。

出来上がった絵本の表紙


帰国が迫った9月4日、かながわ県民センターで報告会を開きました。まず、各ページについて説明。学校での掃除や体育の授業、ビルのデザインなど、私たちには当たり前のことにカザフとの違いがあると知りました。桜や紅葉については、種類やなぜ紅葉するのかが解説されていて、化学を学ぶジャナルさんらしい子供たちへのメッセージが伝わってきました。

そして、ノックタンの紹介。絵本の主人公のようにかわいいノックタンですが、タイ出身でありながらカザフの子供へのイラストを書くという難しい仕事を成し遂げました。今回の絵本とはまた違った作品を見せてくれて、アーティストとして内に秘めた力を知らされました。

この共同作業で二人の友情がより深まったのも大きな収穫でしょう。

 

その後はリラックスして質疑応答。古代から様々な民族が行きかい、ソ連の支配下で核実験が行われ、1991年独立、という複雑な歴史を持つカザフスタン。あまり触れる機会のない魅力あふれる国について、参加者たちはあふれるように質問し、ジャナルさんは誠実に冷静に答えてくれました。

今人々はカザフ語を取り戻したが、出版される本はロシア語から翻訳されたものが多く、カザフ語の美しい文章、美しい装丁の本がない、今回の絵本の言葉も子供たちにきちんと伝わるよう何度も考えて書いた、という言葉が印象的でした。

カザフの首都アスタナの街のデザインは黒川紀章、核実験後の状況について広島と共同研究している、など日本とのつながりも強いとのこと。独立の頃の状況、学校の制度、季節…まるで私たちがカザフスタンという絵本を手にした子供のように、心が弾み興味がつきませんでした。

カザフの子供たちもこの絵本を読んでたくさんの質問をしてくれることでしょう。

 

これからの夢はカザフ語で文化や科学の本を作ることと語るジャナルさん。今回の絵本作りはまさにその夢への第一歩となりました。まんまる会としてもとても誇らしいことです。

 核実験については最後のページの記事をお読みください。

 今回の活動の報告書を作成しました。